2015年11月30日月曜日

回復期リハビリテーション病棟での、肥満日本人脳卒中患者は機能回復の結果が良い

回復期の脳卒中患者は肥満のほうが有利かもしれないとの、日本人対象の研究です。
url 
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26403365


Obese Japanese Patients with Stroke Have Higher Functional Recovery in Convalescent Rehabilitation Wards: A Retrospective Cohort Study.  J Stroke Cerebrovasc Dis. 2015 Sep 21.  Impact Factor 20141.669
回復期リハビリテーション病棟での、肥満日本人脳卒中患者は機能回復の結果が良い:後ろ向きコホート研究

Abstract

BACKGROUND:
脳卒中患者における死亡率または機能的結果に過度のボディマス指数(BMI)の保護効果は、アジアにおいては確立されていない。脳卒中の肥満患者は、日本リハビリテーション病棟での機能改善のための利点を持っているかどうかを明らかにすることを目的としました。

METHOD:
この後ろ向きコホート研究では、2011年および2015年に回復期リハビリテーション病棟に入院して、退院した患者を対象としている。入院患者の基礎データ、BMI、機能的自立尺度(FIM)スコア、および栄養状態を分析した。参加者は、BMIに応じて4群に分類した(underweight <18.5kg/, standard 18.5-<23kg/, overweight 23-<27.5kg/, obese 27.5kg/)。主要アウトカムは、FIM利得であり、二次アウトカムは退院時FIMスコア。重回帰分析は、BMIと機能回復の間の関係を分析するために行った。

RESULTS:
参加者合計は、897(males 484, females 413; mean age 71.6 years)。それぞれunderweight (134), standard (432), overweight (277), and obese (54)として分類された。中央値FIM利得と退院時FIMスコアは、それぞれ、30および114。肥満群におけるFIM利得は、他グループに比べて有意に高かった。重回帰分析では、肥満は独立FIM利得と相関していた。そして、年齢、性別、入院時のFIMスコアなどの交絡因子について調整後の退院時のFIM利得とも相関していた。

CONCLUSIONS:

肥満日本人の回復期脳卒中患者はリハビリテーション病棟での機能回復にいくつかの利点を持っているかもしれない。

2015年10月5日月曜日

脳卒中片麻痺患者のトレッドミルトレーニングにおいての傾斜の効果について

トレッドミル歩行に傾斜の負荷を加えると、脳卒中片麻痺患者の歩行において速度と麻痺側ステップ長が群間比較で有意な改善があったのとの内容です。



Effects of Treadmill Inclination on Hemiparetic Gait: Controlled and Randomized Clinical Trial
脳卒中片麻痺患者の傾斜トレッドミルの影響:RCT

American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation
September 2015 Vol. 94 - Issue 9: p 718–727
2015 Impact Factor:           2.202

URL  : http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25357148

Abstract

OBJECTIVE:
本研究の目的は、片麻痺患者における歩行の運動学的特性への傾斜トレッドミルトレーニングの効果を分析することです。

DESIGN:
盲検、無作為比較試験。28名の被験者を2つの群に分けた。コントロール群は傾斜のない部分体重支持トレッドミル群。実験群は10%の傾斜での部分体重支持トレッドミル群。すべてのボランティアは、12のトレーニングセッションの前後の機能的自立、運動機能、バランス、歩行を評価した。

RESULTS:
両グループは、バランス(P <0.001)、運動機能(P <0.001)、および機能的自立(P = 0.002)で介入前後に有意な変化があった。コントロール群と実験群との比較では、速度(P = 0.02)と麻痺側ステップ長(P = 0.03)に優位な差が観察された。角度変数はいずれの群でも有意差を示さなかった。

CONCLUSIONS:
片麻痺患者では、部分体重支持トレッドミル歩行訓練の際に傾斜を加えることは効果を高めることができる。


※傾斜の参考
10%の傾斜=1/10の勾配の坂=5.71°
一般の階段に代わる傾斜路(高さ1m以上)=18以下(7.1°以下);建築基準法・施行令26
車いす使用者のスロープ(屋外)=115以下(3.8°以下);バリアフリー法の円滑化誘導基準・11条・6
車いす使用者のスロープ(屋内)=112以下(4.7°以下);バリアフリー法の円滑化誘導基準・6条・2



書籍紹介:ペリーの歩行分析
私は第1版の洋書を持っているのですが、第2版の邦訳も出ているのですね。

2015年8月18日火曜日

運動イメージの質は概日リズムを示す(高齢者入院患者対象の研究)

高齢者では運動イメージの質は概日リズムを示す(一方で実際の運動実行そのものは概日の変調がない)。との内容の論文を紹介いたします。


Arch Phys Med Rehabil. 2015 Jul;96(7):1229-34.
Influence of Circadian Rhythms on the Temporal Features of Motor Imagery for Older Adult Inpatients. 高齢入院患者の運動イメージの時間的特徴に与える概日リズムの影響
Rulleau T, Mauvieux B, Toussaint L.

Abstract

OBJECTIVE:高齢入院患者がリハビリテーションの活動に運動イメージを使う際の、一日のうち最高の時間を決定するために、運動イメージの質に対する概日調節を調べる。

DESIGN:
Time series posttest only.時系列事後テスト

SETTING:
Inpatient rehabilitation center.入院リハビリテーションセンター。

PARTICIPANTS:
参加者は、多様な老人医学、神経老人医学の理由で入院した高齢者入院患者34人。彼らは、補助具無しで座って対象物を操作し、介助なしに、または杖で30秒内で10メートルを歩くことができる

INTERVENTION:None.

MAIN OUTCOME MEASURES:
書き取り課題やウォーキング活動を実行したり、イメージしたりすることは一日7(9:15 am-4:45 pm)、リハビリテーションの活動と同時進行で行われた。各試験と各入院患者の運動イメージの質は等時性指標isochrony indexを計算することによって評価した(すなわち、実行とイメージ行動の平均持続時間の差の絶対値)。コサイナー法は、概日リズムcircadian rhythmicityのための時系列を分析に使用した。

RESULTS:
リズムの変調が実行運動には現れなかったのに対し、イメージ運動期間と等時性指数は、概日の変調を示した。運動イメージの質は、それぞれ書き込み課題で1018分、歩行で1210 でより高かった。

CONCLUSIONS:
運動行動の認知面と感覚運動sensorimotorの側面は、高齢者の間で異なっていた。運動イメージの時間的特徴は、明確な日内変動circadian variationを示した。実用的な観点から、本研究では、高齢者の入院患者とリハビリテーション活動に運動イメージのための効果的なスケジュールに基づいて情報を提供している。


書籍紹介:脳のなかの幽霊
ラマチャンドランの脳のなかの幽霊。10年以上前の出版ですが今読んでもとても面白いです。文庫化されて安く手に入るようになっているようです。

2015年4月13日月曜日

脳梗塞の再発で機能的な回復は遅延しない

日々の臨床において、再発性の脳卒中患者では、なんとなく機能回復が遅延する印象がありましたが、この研究では脳卒中の再発ということが短期間の機能的転機に悪影響を及ぼすと考えるべきではないと結論されています。漠然とした印象が必ずしも真でないと感じました。


Functional gain following rehabilitation of recurrent ischemic stroke in the elderly: experience of a post-acute care rehabilitation setting.
高齢者の再発性脳梗塞後の機能回復:亜急性期のリハビリテーション施設において

Arch Gerontol Geriatr. 2015 Jan-Feb;60(1):108-11. 
Archives of Gerontology and Geriatrics 2013 / 2014 Impact Factor 1.525
老年学と老年医学

Mizrahi EH, Fleissig Y, Arad M, Adunsky A.

アブストラクト
本研究の目的は再発性の脳梗塞患者のリハビリテーションは、機能回復に影響するかどうかを評価することである。私たちは、脳梗塞の発症後に連続してリハビリテーションにために入院した高齢患者919名について検討した。患者のうち22%が、再発脳卒中だった。初発脳卒中患者と再発脳梗塞患者の機能的転帰は、入院と退院時機能的自立測定スケール(FIM)により評価した。データは、t検定、カイ二乗検定、線形重回帰分析によって分析した。初発脳卒中患者は716名、再発脳卒中はと203名であった。入院時の合計FIMとモーターFIM、退院時の合計FIMとモーターFIM、FIMgain、Montebello Rehabilitation Factor (RFG) FIM scores は2群で同じ傾向であった。線形重回帰分析では、年齢(beta=-0.13, p=0.001) 、入院期間 (beta=0.21, p<0.001)、MMSE (beta=0.1, p=0.01)は高いFIMスコアを得るための独立した予測因子として検出された。今回の研究ではリハビリテーション病院に入院した再発脳梗塞患者は、退院時において初発脳卒中患者と同じようなFIM gainスコアを示すことを示唆している。亜急性期のリハビリテーション施設において、脳卒中の再発ということが短期間の機能的転機に悪影響を及ぼすと考えるべきではないと結論される。

URL , http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25239513




書籍紹介:脳からみたリハビリ治療
少し出版が古いのですが、専門家でない方にすすめるには良い本です。

2015年3月9日月曜日

脳卒中患者は発症後1年たっても不活動な生活をしている。

脳卒中後は座りきりの生活時間が長くなり、また一年間の追跡調査でもその傾向は変わらなかったのと結果です。



Arch Phys Med Rehabil. 2015 Jan;96(1):15-23. doi: 10.1016/j.apmr.2014.08.015. Epub 2014 Sep 16.
Sedentary behavior in the first year after stroke: a longitudinal cohort study with objective measures.
脳卒中後一年間の座りがちな行動:客観的尺度による縦断的コホート研究
Tieges Z, Mead G, Allerhand M, Duncan F, van Wijck F, Fitzsimons C, Greig C, Chastin S.

要約

対象:座りがちな行動を減らすことが新たな治療ターゲットかどうかを確認するために、脳卒中後の座りがちな行動(すなわち、全く運動せずに横になるか、座りっきり)の縦断的変化を定量化する。

デザイン:急性期脳卒中患者の一年間の縦断的コホート研究

設定:退院後の急性期教育病院Acute teaching hospitalや外来クリニック、地域社会

参加者:急性期脳卒中患者96名、平均年齢72歳を発症後1,6,12ヶ月で評価した。
(N=96; median age, 72y, interquartile range [IQR]=64-80y; 67% men; median National Institute of Health Stroke Scale score=2, IQR=1-3)

介入:適用なし

主な評価指標:座りがちな行動で過ごした量と、時間のパターンの客観的な測定。

結果:脳卒中患者は、非常に座りきりで1日のうち平均81%をそのことに費やしていた: 1ヶ月目で平均19.9 hours (IQR=18.4-22.1h), 6ヶ月目で19.1 hours (17.8-20.8h), 12ヶ月目で19.3 hours (17.3-20.9h). 座りがちな行動の縦断的変化は、線形混合効果モデルを用いて推定した. 共変量は、年齢、性別、脳卒中重症度(NIHSS:National Institute of Health Stroke Scale score)、身体機能(6分間歩行距離)、かつ機能的な独立性は(Nottingham Extended Activities of Daily Living Questionnaire score)。脳卒中のより高い重症度と、少ない機能的自立は座りきりの生活と横断的に関連していた。(β=.11, SE=.05, P=.020 and β=-.11, SE=.01, P<.001, respectively). 重要な事は座りきりの行動は脳卒中後の最初の一年では変化しなかったことと機能的能力とは関係がなかったことである。


結論:脳卒中患者は非常に座りきりで、彼らの機能的な能力とは関係なく一年後もそのままだった。脳卒中リハビリテーションにおいて座りがちな行動を減らす介入を開発することは潜在的に新しい治療ターゲットかもしれません。


奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき:(読書)

今さらなんだけど、同僚に借りて「奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき (新潮文庫) ジル・ボルト テイラー」を読んだ。合わせてTEDの動画も感動的でお勧め。この本はリハビリテーションの過程での彼女の内省が非常に興味深い内容です。また、発症と同時に彼女が感じるようになる(宗教的ともとれる)意識の語りも面白い(以前読んだ「生きて死ぬ智慧 」という般若心経を生命科学者の柳澤 桂子さんが解説した本を思い出した)。