2014年8月8日金曜日

行動療法の一技法であるトークンエコノミー法 (token economy)によって、精神科入院患者の暴力などの攻撃的な行動を減らすことが出来る

トークンエコノミー法をもちいて行動の変容を試みた研究の紹介です。
私も注意障害を有する脳卒中患者さんの安全への配慮を促す目的で用いたことがありますが(車いすのフットレストはね上げやブレーキが自分でできたら、シールを貼る。ポイントシール形式)、その時はかなり短期的な効果があった印象がありました。行動療法を理学療法士が学ぶことは役に立つことだと考えます。


※トークンエコノミー法は行動療法のオペラント条件づけに属する一技法。一定の課題を正しく遂行できたときに、あらかじめ約束した条件に従って報酬を与える。これにより、目標とする行動を強化する。正の強化の例には、シール、疑似コインなどのトークン(疑似貨幣)。



Modification of severe violent and aggressive behavior among psychiatric inpatients through the use of a short-term token economy.
短期トークンエコノミー法の使用による精神科入院患者の深刻な暴力や攻撃的な行動の修正
J Korean Acad Nurs. 2012 Dec;42(7):1062-9.
Park JS, Lee K.


Abstract

PURPOSE:
精神科病院にて暴力的な行動をもつ患者に対するトーキンエコノミー法の有効性を判断するような研究は殆ど無い。本研究の目的は、慢性の精神病で入院している患者の暴力的な行動に対する短期トークン·エコノミー法(STTE)の有効性を検討することであった。


METHODS:
不等価対照(統制)群デザインで行った。 この実験の参加者は20081月から4月の間で実験群22人、対照群22人であった。すべて男性。一つの病院にて、男性入院患者の攻撃的な行動のとしてのベースライン観察は行動修正プログラムを開始する前の週に行われ、言葉による攻撃、物的損傷、身体的な攻撃を含むOvert Aggression Scale (OAS)を用いて測定した。


RESULTS:
STTEを用いた8週間の行動修正プログラムの後で実験群は攻撃的な行動スコアは減少した。また、一方でその間コントロールグループではスコアは増加していた。


CONCLUSION:
研究結果はSTTEが精神病院入院の男性患者の攻撃的行動を低下させるのに有効であることを示している。本研究の結果は、入院患者の暴力的な行動をコントールする際に、強制手段や精神薬を減らすのに役に立つであろう。

Table 1 
Homogeneity Test of Characteristics between Experimental and Control Groups (N=44)

Exp.=Experimental group; Cont.=Control group.

Table 2 
Homogeneity Test of Dependent Variables between Experimental and Control Groups (N=44)

Exp.=Experimental group; Cont.=Control group.

Table 3 
Changes in Intervention and Comparison Group by Aggressive Behavior Items (N=44)

Exp.=Experimental group; Cont.=Control group.

Figure 1 
Changes in aggressive behavior scores.

Table 4 
Simple Main Effect Analysis of Aggressive Behavior Scores (N=44)

Exp.=Experimental group; Cont.=Control group; G=Group.