2014年8月14日木曜日

頸部マニピュレーション(徒手療法)が頸動脈解離(内頚動脈、椎骨動脈)を引き起こすことで脳卒中になる可能性がある:American Heart AssociationとAmerican Stroke Associationから医療従事者のためのステートメント

徒手療法を行う臨床家に対して、頸部のマニピュレーションが脳卒中を引き起こす可能性があることを注意喚起する内容です。



Stroke. 2014 Aug 7.
Cervical Arterial Dissections and Association With Cervical Manipulative Therapy: A Statement for Healthcare Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association.
頸部マニピュレーションで頸動脈解離との関係:米国心臓協会/アメリカ脳卒中協会(American Heart Association/American Stroke Association)
から医療従事者のための提言。
Stroke. 2014 Aug 7.

Biller J, Sacco RL, Albuquerque FC, Demaerschalk BM, Fayad P, Long PH, Noorollah LD, Panagos PD, Schievink WI, Schwartz NE, Shuaib A, Thaler DE, Tirschwell DL; on behalf of the American Heart Association Stroke Council.


Abstract

PURPOSE:
頸動脈解離(Cervical artery dissections :CDs)は若者や中年成人における脳卒中の最も一般的な原因の一つ。この科学的な声明の目的は、CDsの診断とマネジメント、頸部徒手療法(ervical manipulative therapy:CMT)との統計的関連性に関するエビデンスの現在の状態を確認すること。 CMTでは、高または低振幅のスラスト(thrust)は、医療専門家によって頸椎に行われることがある。


METHODS:
執筆グループのメンバーは、American Heart Association Stroke Council's Scientific Statements Oversight CommitteeAmerican Heart Association's Manuscript Oversight Committeeによって任命された。メンバーは専門知識の彼らの領域に関連する話題を割り当てられて、既存のエビデンスをまとめて、現在の知識のギャップを示すために、適切な文献をレビューし、発表された臨床および疫学調査、罹患率と死亡率報告、臨床および公衆衛生ガイドライン、権威あるステートメント、私見、専門家の意見を批評した。


RESULTS:
頸動脈解離(CD)患者は、片側の頭痛、後頸部の痛み、または主に動脈-動脈塞栓症、CD脳神経麻痺、oculosympathetic(眼交感神経)麻痺、または拍動性の耳鳴りを呈する脳または網膜虚血(一過性脳虚血または脳卒中)を生じる。 CDの診断は、詳細な病歴、身体検査および目標とされた補助調査によって行われた。軽度な外傷の役割は議論の余地があるが、機械的な力は、椎骨動脈と内頸動脈の内膜損傷につながるし、結果としてCDになることがある。障害レベルは、多くの良好なアウトカムがある一方で重大な神経学的後遺症が発生する可能性があり、CD患者間で様々である。CDのもっとも適切なマネジメントストラテジーを推奨するようなエビデンスに基づくガイドラインは現在無い。抗血小板及び抗凝固治療は、ローカルの血栓や二次的な塞栓症の予防のために使用される。ケースコントロールおよび他の報告では、CD、特に椎骨動脈解離と頸部手技療法(CMT)間の疫学的関連性を示唆している。このことは以前から存在するCDのこれらの患者の認識欠如か、CMTによって引き起こされた外傷によるものかははっきりしない。超音波検査、コンピュータ断層血管造影法、磁気共鳴血管造影による磁気共鳴画像は、CDの診断に有用である。フォローアップ神経画像処理は非侵襲性様式で優先して実施される、しかし単一のテストをゴールドスタンダードとしてはならないことを我々は示唆している。


CONCLUSIONS:

CDは、若者~中年の患者における虚血性脳卒中の重要な原因である。CDは、上部の頸椎の中で主要なもので、内頸動脈または椎骨動脈を含む。現在の生体力学的証拠はCMTが、CDの原因となる主張を確立するは不十分であるが、臨床報告は、CDのかなりの数において機械的な力が役割を果たしており、最も人口制御した研究では、若い患者に、CMTVAD(椎骨動脈解離)脳卒中間に関連があることを示唆している。CMTを過去に受けた患者のCMT関連CDの発生率がよく確立されていなくて、そしておそらく発生率は低いが、一般開業医はCDを示す徴候あれば、CDの可能性を強く考慮しなければならない。そして、患者は頸椎のマニピュレーション(徒手療法)を経験する前にCDCMTの間での統計的関連性を知らされなければならない。









2014年8月12日火曜日

脳卒中に伴う「うつ病(状態)」に対して認知行動療法を行ったが、明らかな効果を示せなかった

少し古い論文ですが、脳卒中後うつ病に対する認知行動療法の効果を検証しています。ここでは、プラセボや標準ケアと比較して有意な差を示せていません。今回の研究と同じような内容の介入を慢性期脳卒中患者のみを対照にして行ってみると違った結果にならないか興味があります。



Cognitive behavioral psychotherapy for depression following stroke: a randomized controlled trial.
脳卒中に伴う「うつ病(状態)」に対する認知行動(心理)療法:ランダム化比較試験
Lincoln NB, Flannaghan T.
Stroke. 2003 Jan;34(1):111-5.

Abstract

BACKGROUND AND PURPOSE:
脳卒中発症後のうつ病に対する、心理的介入の有効性には決定的証拠がある。私たちは、認知行動療法(CBT)のランダム化比較試験の結果を報告する。

METHODS:
病院に入院した、脳卒中患者に対して脳卒中後1ヶ月、3ヶ月および6ヶ月の気分の質問紙を実施した。落ち込んでいる患者は、試験に参加するために案内され、CBTを受ける群(n =39)、注意プラセボ介入群(n =43)、または標準ケア群(N=41)にランダムに割り当てられた。アウトカムは採用後の3ヶ月、6ヶ月目に実施された。Beck Depression Inventory, Wakefield Depression Inventory, Extended Activities of Daily Living scale, London Handicap Scale, そしてケアの満足度の評価。

RESULTS:
患者の気分に関しての各グループ間に、日常生活活動手段、ハンディキャップ、ケアに対する満足度において、各群に独立した有意な差はなかった。

CONCLUSIONS:
脳卒中後うつ病の治療におけるCBTは、この研究では効果がないことが示された。しかし、小さいサンプルサイズ、動員の方法、そして選択基準の理由において、さらに無作為化試験が必要である。














2014年8月8日金曜日

行動療法の一技法であるトークンエコノミー法 (token economy)によって、精神科入院患者の暴力などの攻撃的な行動を減らすことが出来る

トークンエコノミー法をもちいて行動の変容を試みた研究の紹介です。
私も注意障害を有する脳卒中患者さんの安全への配慮を促す目的で用いたことがありますが(車いすのフットレストはね上げやブレーキが自分でできたら、シールを貼る。ポイントシール形式)、その時はかなり短期的な効果があった印象がありました。行動療法を理学療法士が学ぶことは役に立つことだと考えます。


※トークンエコノミー法は行動療法のオペラント条件づけに属する一技法。一定の課題を正しく遂行できたときに、あらかじめ約束した条件に従って報酬を与える。これにより、目標とする行動を強化する。正の強化の例には、シール、疑似コインなどのトークン(疑似貨幣)。



Modification of severe violent and aggressive behavior among psychiatric inpatients through the use of a short-term token economy.
短期トークンエコノミー法の使用による精神科入院患者の深刻な暴力や攻撃的な行動の修正
J Korean Acad Nurs. 2012 Dec;42(7):1062-9.
Park JS, Lee K.


Abstract

PURPOSE:
精神科病院にて暴力的な行動をもつ患者に対するトーキンエコノミー法の有効性を判断するような研究は殆ど無い。本研究の目的は、慢性の精神病で入院している患者の暴力的な行動に対する短期トークン·エコノミー法(STTE)の有効性を検討することであった。


METHODS:
不等価対照(統制)群デザインで行った。 この実験の参加者は20081月から4月の間で実験群22人、対照群22人であった。すべて男性。一つの病院にて、男性入院患者の攻撃的な行動のとしてのベースライン観察は行動修正プログラムを開始する前の週に行われ、言葉による攻撃、物的損傷、身体的な攻撃を含むOvert Aggression Scale (OAS)を用いて測定した。


RESULTS:
STTEを用いた8週間の行動修正プログラムの後で実験群は攻撃的な行動スコアは減少した。また、一方でその間コントロールグループではスコアは増加していた。


CONCLUSION:
研究結果はSTTEが精神病院入院の男性患者の攻撃的行動を低下させるのに有効であることを示している。本研究の結果は、入院患者の暴力的な行動をコントールする際に、強制手段や精神薬を減らすのに役に立つであろう。

Table 1 
Homogeneity Test of Characteristics between Experimental and Control Groups (N=44)

Exp.=Experimental group; Cont.=Control group.

Table 2 
Homogeneity Test of Dependent Variables between Experimental and Control Groups (N=44)

Exp.=Experimental group; Cont.=Control group.

Table 3 
Changes in Intervention and Comparison Group by Aggressive Behavior Items (N=44)

Exp.=Experimental group; Cont.=Control group.

Figure 1 
Changes in aggressive behavior scores.

Table 4 
Simple Main Effect Analysis of Aggressive Behavior Scores (N=44)

Exp.=Experimental group; Cont.=Control group; G=Group.





2014年8月5日火曜日

パーキンソン病に対するキューイングを、聴覚刺激と視覚刺激を比較した結果、聴覚刺激のほうが歩行に対して有意に良い効果があった

パーキンソン病に対するキューイング刺激を、聴覚刺激と視覚刺激を比較した結果、聴覚刺激のほうが歩行に対して有意に良い効果があったとの内容です。

Cueing and Gait Improvement Among People With Parkinson's Disease: A Meta-Analysis
パーキンソン病に対するキュー(刺激《行動をみちびき組織化する感覚信号》)と歩行の改善:メタアナリシス

Archives of Physical Medicine and Rehabilitation
Volume 94, Issue 3, Pages 562–570, March 2013

Sandi J. Spaulding, PhDemail, Brittany Barber, MSc, Morgan Colby, MSc, Bronwyn Cormack, MSc, Tanya Mick, MSc, Mary E. Jenkins, MD

http://www.archives-pmr.org/article/S0003-9993(12)01084-2/abstract

Abstract

Objective
パーキンソン病患者(PD)の歩行に対する、キュー(刺激《行動をみちびき組織化する感覚信号》)において視覚的刺激と音声刺激では相対的にどちらが効果的かを比較する。

Data Sources
系統的な検索は20119月までで行った。使用したデータベースは: EMBASE, Scopus, Medline, CINAHL, and PubMed.

Study Selection
著者4人は次の用語を用いてデータベースを検索した:(Parkinson's disease (略語を含む),gaitcadencesteppacecueingcuesprompt)。PDの歩行に対するキューの効果を評価したすべての研究は、タイトルと抄録をレビュー著者の2組の同意によって選択した。著者それぞれは、各研究に包含および除外基準を適用し、25の記事が選ばれた。含有基準は歩行のパラメータを前後のアウトカムとして計測したキューに関する研究、除外基準はデータが欠如しているものと、歩行補助具を評価したもの。

Data Extraction
各研究からキューの前後のケイデンス、歩幅、速度が収集された。もしデータがグラフ化されている場合は著者のペアは個別に比較され平均化されたデータのポイントを抽出した。

Data Synthesis
データはキューのタイプにもとづいてメタ分析を行って総合的に扱った。聴覚キューはケイデンスの有意な改善を示した (Hedge g=.556; 95% confidence interval [CI], .291–.893)、歩幅 (Hedge g=.497; 95% CI, .289–.696)、速度 (Hedge g=.544; 95% CI, .294–.795)も有意な改善を示した。これとは対照的に、視覚的なキューは歩幅だけが有意な改善をしめした。(Hedge g=.554; 95% CI, .072–1.036).

Conclusions
今回の知見では、聴覚キューがPDの歩行障害を治療するために、より効果的であることを示唆している。さらなる研究が、歩行の改善のための最適な聴覚キューイング戦略を決定するために必要とされる。







2014年8月4日月曜日

携帯電話のショートメッセージサービスリマインダー機能(SMS reminder)を使うことで医療機関の外来予約の受診率を上げることができる。

数日前に携帯電話に外来予約のお知らせを送るリマインダー機能を用いることで、来院率を上げることができるとのシステマテッィクレヴュー論文です。とくに通知なしで未来院率(連絡なしの外来受診キャンセル)が上昇して悩んでいるクリニックなどで検討の余地のある取り組みかもしれません。



携帯電話のショートメッセージサービスにあるリマインダー機能(SMS reminder)を使えば、どれくらいクリニックに来る方の来院率を上げることに効果的か?メタアナリシスとシステマテッィクレヴュー
How effective are short message service reminders at increasing clinic attendance? A meta-analysis and systematic review.
Health Serv Res. 2012 Apr;47(2):614-32
Guy R, Hocking J, Wand H, Stott S, Ali H, Kaldor J.


Abstract

BACKGROUND AND OBJECTIVES:
ここ数年、来院率を上げるために携帯電話ショートメッセージサービス(SMS)のリマインダーを使う取り組みが着実にされてきた。我々は、医療機関で予約した方の来院率を上げる取り組みとしてSMSリマインダーを使うことが効果的であるかを評価した研究のレヴューを行った。


METHODS:
我々は2010年の6月以前に発表されたSMSリマインダーを行った患者と行わなかった患者の予約者来院率を比較した研究をレヴューした。我々は研究デザインとクリニックの種類によって層別化された、来院率における全体的な効果を判断するためにメタ分析手法を使用した。


RESULTS:
レヴューする基準にあった研究は18あった。RCT論文は8つ。コントロールされた観察研究が10あった。SMSリマインダーとクリニック来院率との効果測定にすべての研究を通しては、有意な異質性が検出された(I(2)  = 90 percent; p < .01)ため、まとまった概算的効果を算出しなかった。研究デザインによる層別化は不均一性が観察研究によるものであることを示した。RCT論文による概算的な効果は1.48 (95% CI: 1.23-1.72)であり、クリニックタイプ(プライマリケアクリニック、病院の外来クリニック)、メッセージタイミング(来院予約の24時間前、48時間前、72時間以上)、対象年齢群(小児、成人)のサブグループ解析では有意な差はなかった。


CONCLUSIONS:
医療ケアの現場で、ショートメッセージリマインダーはクリニックの受診予約者の来院率の見込みを大きく増加させる可能性がある。SMSリマインダーは医療サービスに取って、サービスの提供を改善する簡単で効果的なオプションであるとともに、リマインダーを受け取る患者にとっても、結果的に健康上の利益が得られるだろう。









2014年8月1日金曜日

多発性硬化症患者では意思決定に能力の低下を示し、それは視空間学習、処理速度、ワーキングメモリーの能力低下に関連する。

再発寛解型多発性硬化症患者での意思決定機能の低下を分析した研究の紹介です。ここでは、リスク条件下での意思決定に能力の低下があり、それは視空間学習、処理速度及びワーキングメモリの障害に関連する可能性を示したとされています。



多発性硬化症を有する患者の意思決定機能の障害:症例対照研究
Decision-making impairment in patients with multiple sclerosis: a case–control study

BMJ Open 2014;4:e004918 doi:10.1136/bmjopen-2014-004918
Mauricio F Farez, Lucía Crivelli, Ramón Leiguarda, Jorge Correale

Abstract

目的
再発寛解型多発性硬化症患者の明白なリスク条件の下で意思決定と、曖昧さの条件の下でなされた決定との関係を評価する。多発性硬化症(MS)を有する患者において意思決定のパフォーマンスに関連する認知機能を評価する。


設定
ブエノスアイレス、アルゼンチンのMSセンター。


参加者
再発寛解型多発性硬化症の27人の患者と性別、年齢、教育をマッチさせた27人の健常対照者。


介入
Game of Dice TaskIowa Gambling Task.を使用して、神経心理学的評価と意思決定の評価。


アウトカム
Game of Dice TaskIowa Gambling Taskのスコア


結果
MS患者はより頻繁に不利なサイコロの選択し、Game of Dice Taskで有意に劣ったパフォーマンスを示した(p = 0.019)。同様に、Iowa Gambling Taskにおける有意に低い全体的なスコア(p = 0.007)を示した。ブロック解析は、MSを有する患者と、対照は、ブロック12(それぞれp = 0.15p = 0.24)について同等のスコアを示した。逆に、MSを有する患者は、リスクの条件の下での意思決定に対応する紺のテストの最後の2つ、ブロック4p = 0.003)、と5(p= 0.023)ではスコアが劣っていた。最後にGame of Dice Taskのパフォーマンス Iowa Gambling Taskの最後の3ブロックはともに実行機能ではなく、視空間学習、処理速度とワーキングメモリと相関していた。


結論

MSを有する患者は、リスク条件下での意思決定に能力の低下があり、それは視空間学習、処理速度及びワーキングメモリの障害に関連する可能性を示した。