脳卒中患者の上肢筋力トレーニングに関する論文の紹介です。
結論としては、脳卒中患者に対する筋力トレーニングは、筋緊張の増加や疼痛発生を起こすようなことなしに、上肢の筋力と機能を改善しうる証拠があるとのことです。
全文URL
http://stroke.ahajournals.org/content/41/1/136.short
筋力トレーニングは脳卒中患者の上肢機能を改善させる。:メタアナリシス
Stroke. 2010;41:136-140
背景と目的
脳卒中発生後、上肢や手の筋の最大随意収縮力は減少する。そして上肢の筋力トレーニングは機能改善の可能性があるひとつの介入方法である。
方法
ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスを行った。2009年4月から1950年までのデータベースを検索した。筋力トレーニングの論文は、「筋力」、「上肢機能」、「日常生活動作」を評価指標とした。データ統合は変量効果モデルを用いて行い、効果量は標準化平均値差(SMD)とした。
結果
ヒットした650の研究から、本研究の基準に合致したのは13論文だった。含まれていた患者数は517名であった。統計学的に有意な治療効果が示されたものは「握力」(SMD=0.95, P=0.04)、上肢機能(SMD=0.21, P=0.03)であった。筋力トレーニングの治療効果が見つからなかったのは「日常生活動作」であった。中等度(SMD=0.45, P=0.03)~軽度(SMD=0.26, P=0.01)の上肢機能障害をもつ対象に、上肢機能に対する筋力トレーニングの著明な効果があった。筋力トレーニングが不利な効果を示すような報告はなかった。
結論
脳卒中患者に対する筋力トレーニングは、筋緊張の増加や疼痛発生を起こすこと無しに上肢の筋力と機能を改善しうるエビデンスがある。
Stroke. 2010;41:136-140
Strength Training Improves Upper-Limb Function in Individuals With Stroke
A Meta-Analysis
Jocelyn E. Harris, PhD, OT; Janice J. Eng, PhD, BSc (PT/OT)
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